株式会社呉英製作所

アスベスト含有塗膜除去の対策

アスベスト含有塗膜を除去する際は、作業員の健康被害を防ぐための飛散防止対策と湿潤化が必須です。この記事では、アスベスト塗膜除去の概要とアスベストのリスクレベルを解説したうえで、アスベスト含有仕上塗材の除去方法や湿潤化におすすめの製品を紹介します。

アスベスト塗膜の除去方法を理解し、法規制を遵守した作業プロセスの確立を目指しましょう。

アスベスト塗膜除去の概要

アスベスト塗膜除去とは、建物や設備に使われているアスベスト塗膜を安全に取り除く作業のことです。アスベストは健康被害を引き起こすため、除去作業には十分な安全対策が求められます。以下、アスベスト塗膜除去の概要について解説します。

アスベストが塗膜に使用されている背景

アスベストは天然の鉱物繊維で、優れた不燃性や耐熱性、防音性を持つため、広く建築材料として使用されてきました。特に建物の塗膜や外装材として、その耐久性と防火性能は高く評価されています。日本では高度経済成長期にアスベストを使用した建築が流行していました。

また、安価で加工がしやすいことも、建築材料として広まった大きな要因です。アスベストには幅広い用途があり、ピーク時には3000種類以上の製品に使用されたともいわれています。

アスベストによる健康への潜在的リスク

アスベストは細かい繊維状の物質であり、吸入すると肺に深刻なダメージを与えます。長期にわたってアスベストを吸い続けると、肺がんや中皮腫、アスベスト肺といった重篤な疾患を引き起こすリスクがあります。アスベストの繊維は非常に小さく、肉眼では見えないため、作業者や居住者が無意識に吸い込んでしまう危険性が高いです。

アスベストの健康リスクは世界的にも問題になっており、多くの国でその使用が制限、あるいは禁止されています。国内でも1975年に吹付けアスベストが禁止されて以降、アスベスト含有品の製造や輸入、使用が段階的に規制されてきました。

アスベスト塗膜の除去作業が必要となる工事の見分け方

日本では2012年3月にアスベストの使用が全面禁止となりました。しかし、建材として現状で使用されているものは禁止規定の対象外であり、アスベスト塗膜の除去作業はなくなっていません。むしろ、アスベストを含む建築物の解体は、これからピークを迎えるといわれています。

アスベスト塗膜除去が必要な工事は、以下の方法で見分けます。

①アスベストの飛散防止対策が必要かどうか
アスベストの飛散防止対策が必要かどうかは、事前調査でのアスベスト含有検査結果に基づきます。簡易的な判断基準は、2006年9月※以前に着工された建物かどうか確認することです。それ以前の建物は、アスベストを含有している建材が使用されている可能性があります。検査によってアスベスト含有が確認された場合、飛散リスクの評価を行い、必要な対策を講じることが求められます。

※2006年9月に労働安全衛生法施行令(改正)が施行され、石綿及び石綿をその重量の0.1%を超えて含有する、すべての物の製造、輸入、譲渡、提供、使用が禁止されました。

②飛散リスクがあるかどうか
飛散リスクがある工事には、アスベスト含有材料の除去(ケレン作業など)や切断、解体、撤去が含まれます。これらの作業中には、アスベストの粉じんが大量に発生するため、厳密な飛散防止対策が必須です。さらに、作業者にも、アスベストの粉じんばく露防止措置を講じる必要があります。

アスベストの飛散防止対策が必要な工事の具体例

アスベストの飛散防止対策が必要な工事の具体例には、以下のようなものがあります。

  • 外壁の吹付け仕上塗材の除去
  • アスベストを含有するスレート瓦の洗浄
  • アスベストを含有する屋根や外壁のカバー工法
  • アスベストを含有する屋根の葺き替え
  • アスベストを含有する外壁の張り替え
  • アスベスト含有建材のひび割れ補修
  • アスベスト含有建材の塗装前工程

原則として、アスベスト含有建材に対する塗膜除去や高圧洗浄、研磨、撤去といった作業をともなう工事には、飛散防止対策が必要です。

アスベストの
レベルについて

アスベストのレベルは、発じん性の高さによってレベル1からレベル3までの3つのカテゴリーに分けられています。各レベルに応じた適切な対策を実施して作業員の安全を確保し、アスベストの健康リスクを最小限に抑えることが重要です。

<レベル1>発じん性が著しく高い 主にアスベスト含有吹付け材の除去作業が該当し、厳重なばく露防止対策が必要とされるレベルです。作業中に大量のアスベスト繊維が飛散する可能性があるため、作業場所の隔離および防塵対策はもちろん、作業員にも防じんマスクや保護衣の使用が求められます。

<レベル2>発じん性が高い アスベストを含有する保温材や耐火被覆材、断熱材といった建材の除去作業が対象です。レベル1に準じたばく露防止対策が必要であり、湿潤化技術や防護具類の使用、飛散防止措置等を実施します。

<レベル3>発じん性が比較的低い レベル1、レベル2に該当しないアスベスト含有建材、例えば成形板などの除去作業が当てはまります。作業中の発じん性は比較的低いですが、破砕や切断をおこなう際は湿式作業を原則とし、必要に応じて防じんマスクも使用します。

アスベスト含有仕上塗材の除去方法

アスベスト含有仕上塗材を除去するには複数の方法があります。ただし、どの除去方法を採用する場合も、湿潤化をおこなってアスベストの飛散を防ぐことが前提です。ここでは、湿潤化技術の必要性について解説したうえで、それぞれの除去方法を紹介します。

湿潤化技術が必須

湿潤化とは、作業前および作業中に散水し、常に建材を湿潤な状態に保つことです。アスベスト含有仕上塗材を除去する際には、水や専用の湿潤化剤を使用して、アスベスト繊維が乾燥して飛散しないようにします。湿潤化技術は、アスベスト塗膜除去の工事において、作業員や周囲の人々の健康を守るために必須となるスキルです。また、湿潤化のために散水した水はアスベストを含むため、適切に処分・廃棄する必要があります。

除去方法

以下、代表的なアスベスト含有仕上塗材の除去方法を解説します。

剥離剤で除去する方法

剥離剤によってアスベスト含有塗膜を軟化させ、効率的に除去する方法です。アスベスト繊維の飛散を最小限に抑えます。この方法は比較的簡単に実施でき、湿潤化に近い状態がつくれるため、追加の散水は不要です。剥離剤は環境や健康への影響が少ないものを選び、適切な防護具を着用して作業を進めます。作業後は残留物を適切に処理し、環境への影響を最小限にしなければなりません。

高圧水で除去する方法

高圧水を噴射することで、アスベスト含有塗膜を除去する方法です。水圧で塗膜を剥がし取ると同時に、湿潤化もおこなえます。ただし、アスベストが水と混ざって飛散しないように、養生を万全にすることが必要です。作業後には使用した水をすべて回収し、産業廃棄物として処分するか、凝集沈殿をおこなうなど、管轄の自治体が定める方法に従って廃水を処理します。

電動工具で除去する方法

電気グラインダーなどの電動工具を用いて、アスベスト含有塗膜を機械的に除去する方法です。迅速な作業が可能になる反面、アスベスト繊維の飛散リスクが高いことに注意が必要です。作業前から作業中、作業完了まで湿潤状態を維持し、集じん装置も併用して飛散を防止します。防護具の着用や作業区域の隔離も重要です。一定の要件を満たす集じん機能が高い電動工具を用いる場合は、隔離養生と湿潤化を省略して作業できます。

負圧隔離養生など隔離養生や湿潤化と同等以上の方法

負圧隔離養生とは、プラスチックシート等で作業場所を密閉し、集じん・排気装置を用いて負圧状態にすることにより、粉じんの飛散を防止する方法です。隔離養生や湿潤化と同等以上の効果が期待できるため、アスベスト含有仕上塗材の除去方法のひとつとして認められています。

おすすめの製品紹介

アスベスト除去作業において安全かつ効果的な湿潤化を実現する、呉英製作所のおすすめ製品をご紹介します。これらの製品は、作業効率を高めるだけでなく、環境や作業員の安全も確保します。

携帯型で扱いやすいGSCウェットサンダー

GSCウェットサンダーは、水を常時かけながらケレン作業をおこない、同時に剥離物を回収するシステムを搭載しています。回収した剥離物は分離され、水はろ過されて再利用されるため、環境に優しく効率的です。このシステムにより、作業中のアスベスト繊維の飛散を防ぎ、安全に作業を進めることができます。

GSCウェットサンダーの詳細については、こちらをご覧ください

室内への作業騒音を抑える水循環式無振動ドリル

アスベスト含有仕上塗材などの除去や穿孔を目的としたドリル工具です。ダイヤビットの回転ドリルにより、低騒音・無振動での作業を実現しました。例えば、外壁の穿孔作業をおこなっても、室内への騒音を最小限に抑えることが可能です。また、水循環式の採用により汚水が出ないため、現場を汚さずに作業できます。

水循環式無振動ドリルの詳細については、こちらをご覧ください