株式会社呉英製作所

外壁タイルの剥がれ補修症状別の外壁タイル改修工法と使用工具を解説

外壁タイルは建物の外観を守り、美観を保つ重要な部材です。しかし、風雨や紫外線の影響を受け続けるため、時間とともに劣化が進行します。ひび割れや剥がれ、浮きが見られる場合は、早急な外壁補修が必要です。適切な工具を使用することで、外壁補修作業を効率的かつ確実に行うことができます。

この記事では、外壁の修繕目安や劣化症状、タイル浮きの主な要因を説明し、外壁タイルの回収工法や補修に不可欠な工具類をメーカー視点から詳しく解説します。

  1. 外壁の修繕の目安は?
  2. 外壁タイルの劣化症状
  3. タイル浮きの主な要因
  4. 症状別外壁タイルの改修工法
  5. 外壁補修に使われる主な工具例

外壁の修繕の目安は?

外壁の修繕時期は、建物の寿命や環境条件、使用されている材料によって異なりますが、一般的には10〜15年が目安とされています。外壁は常に風雨や紫外線にさらされているため、時間の経過とともに劣化が進みます。そのため、定期的な点検とメンテナンスが必要です。

外壁の修繕は建物の美観を保つだけでなく、構造的な安全性を確保する意味もあります。早期に適切な処置を行うことで建物全体の寿命を延ばし、トータルの修繕コストを抑えることにもつながります。

外壁タイルの劣化症状

想定される修繕時期よりも早く、外壁タイルに劣化症状が見られる場合があります。代表的な症状は、タイルの浮き、ひび割れ、欠損、などです。放置すると外壁の防水機能が低下し、さらに深刻なダメージを引き起こす可能性があります。ここでは、タイル浮きとひび割れ・欠損について詳しく説明します。

タイル浮き

タイル浮きとは、外壁タイルがコンクリート基材から剥がれかけている状態のことです。タイルを固定しているモルタルなどの下地が浮く「下地浮き」と、タイルそのものが下地から浮いている「陶片浮き」の2種類があります。タイル浮きが進行すると見た目が悪くなるだけでなく、落下して事故を引き起こす可能性もあり、危険です。

タイルの浮きは、パールハンマー(打診棒)でタイルを軽く叩いてみて、音が変わるかどうかで確認します。一般的には、高めの音だと陶片浮き、低めの音だと下地浮きと判断されます。

ひび割れ・欠損

ひび割れや欠損は、外壁タイルの劣化の典型的な症状です。ひび割れは、タイル自体や目地に発生することがあり、主に温度変化や地震などの外部要因によって引き起こされます。これらの亀裂から雨水が侵入すると、内部の構造材が腐食し、さらなる損傷を招く可能性があります。一方、欠損とはタイルの一部が剥がれ落ちている状態のことです。美観を損なうだけでなく、防水機能を低下させます。

ひび割れ・欠損はタイル落下のリスクがあるため、迅速に補修しなければなりません。専門業者に依頼して、張り替え工事を行うことが重要です。

タイル浮きの主な要因

外壁タイルの浮きの原因はさまざまです。以下、日本の建築物で発生しやすいタイル浮きの要因を解説します。

・経年劣化
日射や風雨にさらされることで、タイルと接着剤がしだいに劣化していきます。温度変化によってタイルが膨張・収縮を繰り返すことも、接着力の低下に影響します。

・地震
地震の揺れは外壁全体に負荷をかけるため、タイルが浮いたり剥がれたりすることがあります。特に大きめの地震が起こった後は、剥離しそうなタイルがないか点検が必要です。

・湿度
湿気がタイルや目地に侵入すると、モルタルの接着力が弱まります。特に梅雨の時期や湿度の高い環境では、タイルの浮きが発生しやすいです。水分が内部に浸透すると、温度の変化の影響を受けやすくなり、凍結・膨張による損傷も起こりやすくなります。

・施工不良
タイル施工時に、モルタルや接着剤が適切に使用されなかったり、施工手順が正しく守られなかったりしたケースです。例えば、タイルがモルタルへ十分に圧着されていなかったり、接着剤の塗布量が不足していたりすると、短期間でタイルが浮いてしまう場合があります。

・モルタルの状態
タイルの接着に使用するモルタルの状態も重要です。モルタル自体の質が悪ければ十分な接着力が得られません。また、モルタルが適切に混合されていない場合や、乾燥時間が不足していた場合にも、強度低下によってタイルの浮きが発生しやすくなります。

・コンクリート構造物の影響
コンクリート構造物がタイルに何らかの影響を与えて、浮きを引き起こすことがあります。コンクリートが含む湿気による膨張・収縮、あるいは構造物の動きなどで接着部分に負荷がかかり、タイルの浮きを起こします。

症状別外壁タイルの改修工法

外壁タイルの劣化症状に応じた改修工法を選ぶことが、長期的な建物の美観と安全性を保つために重要です。ここでは、代表的な改修工法について詳しく解説します。

アンカーピンニングエポキシ樹脂注入工法 200

アンカーピンニングエポキシ樹脂注入工法は、エポキシ樹脂の注入とアンカーピンの打ち込みにより、タイルが浮いている部分を接着・固定する方法です。

まず、浮いているタイルの周囲にアンカーピンの挿入口を開け、そこにエポキシ樹脂を注入します。次に、エアーの巻き込みに注意しながらアンカーピンを挿入し、ピンとタイルをしっかりと接着させます。

アンカーピンニングエポキシ樹脂注入工法の作業は比較的容易で、コストと時間を抑えた外壁補修が可能です。

タイル除去Uカットシーリング工法

タイル除去Uカットシーリング工法は、U字型にカットした目地部分にシーリング材を充填する方法です。

最初に劣化したタイルを取り外し、周囲の目地部分をディスクサンダーなどで溝状(U字型)にカットします。その後、カットした溝の中にプライマーを塗布し、さらにシーリング材を充填して、表面をモルタルで仕上げます。最後に、撤去部分にタイルを張って完成です。

シーリング材が柔軟性を持つため、温度変化や地震などの外力にも対応できる強固な接着が可能です。また、シーリング材は防水性に優れており、外壁全体の防水性能を向上させる効果があります。この工法は、タイルの浮きやひび割れが1.0mm以上にわたる場合に適しています。

埋め戻し工法

埋め戻し工法は、外壁タイルのひび割れや爆裂部分にモルタルを充填し、補修する方法です。

まず、劣化した部分を清掃し、必要に応じて補強材を挿入します。このとき、サビによって傷んだ部分があれば斫りおとし、鉄筋に防錆処理を行います。その後、モルタルを埋め戻すことによって、タイルと基材の固定が可能です。

爆裂を放置していると雨水がコンクリート内部に侵入し、建物の耐久性を損なう恐れがあります。劣化状況がひどい場合には、全面的なタイルの張り替えも検討すべきです。

張替え工法

張替え工法は、タイルの著しい劣化により再利用が難しい場合や、大規模な改修が必要な場合に、タイルを全面的に取り替える方法です。

まず、劣化したタイルを取り外し、下地を清掃・整備します。欠損部にはモルタルやエポキシ樹脂を充填します。内部の鉄筋などが傷んでいる場合には、防錆処理後に適切な材料の充填も必要です。

張替え工法は、外壁全体の美観を一新し、防水性能や耐久性を向上させることができます。ただし、大規模工事となるため工期が長く、コストも高くなります。

外壁補修に使われる主な工具例

外壁補修では、適切な工具を使用することで効率的かつ確実な作業が可能になります。ここでは、代表的な工具とその特徴について解説します。

ダイヤモンドカッター

・構造と機能
ダイヤモンドカッターは、刃にダイヤモンド粒子を付着させた切削工具です。ダイヤモンドは最高硬度を持つ物質であるため、非常に硬い材料にも対応できます。

・耐久性と切削力
ダイヤモンドカッターは耐久性が高く、長寿命です。強力な切断力を持ち、交換頻度も少ないため、作業効率を高めることができます。

・外壁補修における使用方法
主にひび割れ部分の切削や古い外壁の除去に使用されます。精密な切削がしやすいため、正確な作業が求められる場合に最適です。

・工具選定のポイント
使用するダイヤモンドカッターは、切削力と耐久性を重視して選ぶことが重要です。

呉英製作所のおすすめ製品については、以下のページをご覧ください。

ダイヤモンドカッター

ハンマードリル

・構造と機能
ハンマードリルは、打撃と回転を組み合わせることによって孔開けを行う工具です。コンクリートや石材など、振動ドリルやドライバーでは対応が難しい難削材にも使うことができます。

・適用範囲
外壁コンクリートの孔開けやアンカー設置時の孔開け、斫り作業などに幅広く用いられます。

・外壁補修における使用方法
外壁補修では、アンカーピンニングの作業などで活躍します。ただし、打撃を用いるため、割れやすいタイルやレンガには不向きです。

・工具選定のポイント
集塵機能や電源方式など、扱いやすさを重視して選ぶのがポイントです。また、ハンマードリルは振動と騒音が大きいため、周囲に配慮した作業が求められる場合には無振動ドリルが最適です。

呉英製作所のおすすめ製品については、以下のページをご覧ください。

水循環式無振動ドリル

グラインダー

・構造と機能
グラインダーは、回転するディスクを用いて材料を研磨・切削・研削する工具です。回転数が高いものほど、効率よく表面を滑らかに仕上げられます。

・適用範囲
表面の仕上げや研磨、切断作業に適しているため、さまざまな用途で使用されています。

・外壁補修における使用方法
外壁補修では、表面の平滑化や仕上げ作業に使用されます。グラインダーを使うことで、補修後の外壁を美しく仕上げることができます。

・工具選定のポイント
グラインダーは粉塵が飛散しやすいため、集塵機能付きのグラインダーがおすすめです。または、集塵カバーや集塵カップを取り付けることでも粉塵対策ができます。

呉英製作所のおすすめ製品については、以下のページをご覧ください。

電気グラインダー用集塵カバー/集塵機能付きエアーグラインダー